4.これからの中心市街地活性化に向けて

4-1 「デジタル田園都市国家構想」の推進とあわせた拠点形成の推進

 政府が2022年末に公表したデジタル田園都市国家構想基本戦略では、「デジタルの力を活用した地方の社会課題解決」に向けて、2027年度に「地⽅と東京圏との転⼊・転出を均衡させること(2021年度は83,827⼈の転⼊超過)」、「スタートアップや中小企業等の取組の促進・定着・実装が見られる地域を900地域とすること(2022年6月時点で144地域)」、スマートシティの選定数を2025年までに100地域とすること等が目標として掲げられている。

 また、現在策定が進められている第三次地方形成計画では、デジタルとリアルが融合した「地域生活圏」の形成が展開される見込みである。

 「デジタル田園都市国家構想」については、地方創生から移行した「デジタル田園都市国家構想総合戦略」に基づき、今後も関連事業が展開される見込みであり、基盤産業の集積や、拠点性の強化など、当面の中心市街地(まちの中心)の整備に当たっては、こうした取組を活用することが有効だと考えられる。

4-2 公共施設整備をきっかけとする機能整備

 これからの中心市街地(まちの中心)の活性化の担い手としては、商業者に限らない事業者や地権者の参画が期待されるが、民間主導で変われる地域は限られる可能性が高い。当分の間、多くの地域では活性化に向けた変革のトリガーとして、行政による“新しい公共公益施設”の導入が有効だと考えられる。

 今日、人口減少、高齢化が進む中で、ほぼすべての市町村で公共施設等総合管理計画が策定され、公共施設の再編整備が取り組まれている。中心市街地(まちの中心)の活性化に当たり、公共施設の機能再編や再配置が有効なきっかけとなる場合も多いと考えられる。地域のオーガナイザーとしての市町村が、中心市街地(まちの中心)の活性化に向けて自ら実施できる手段として、検討することが望まれる。

4-3 官民連携によるエリアマネジメントのための仕組みづくり

 これからの中心市街地(まちの中心)の活性化に当たっては、従来にも増して地域外とのネットワークを強化する必要がある。中心市街地(まちの中心)が、地域経済をけん引するまちの拠点としての役割を果たすためには、域外の地域に対してサービスを提供し、地域経済を支える基盤産業や、地区としての求心力強化に資する機能を集積させることが必要なためである。

 そのためには、地域のプロモーションや、地域産品の販売チャネルの構築が重要であり、新しい官民連携によるエリアマネジメントのための仕組みづくりを行うことが有効だと考えられる。例えば、中心市街地(まちの中心)の管理運営を担うまちづくり会社について、地域産品を扱う地域商社機能や、国内外への地域の観光プロモーションを展開する観光地域づくり法人(DMO)としての機能を強化することも有効だと考えられる。

 また、マッチングや地域通貨の導入等の仕組みについては、アグリゲーターと呼ばれる広域で複数の地域に、地域の持続的発展に資する製品又はサービスを供給する地域外法人全国を対象とするネットワークサービスの活用も選択肢とすることが考えられる。

4-4 多様な機能立地推進に向けた制度運用と改正

 中心市街地活性化2.0が目指す、地域の稼ぐ力を支える業務機能等、まちの中心に立地する産業機能を含み、よりトータルにまちの活性化を担う機能が集積する拠点を実現するためには、中心市街地活性化法を改正し、現在は地方再生の中で推進されている業務機能を含む多様な機能整備を推進するための法的条件を整備すべきだと考えられる。

 一方、地域では制度改正を待たずに産業立地も視野に置いた地域づくりを進める必要があり、柔軟な制度運用を行うことが重要である。

 ビジョンの実現に資する制度運用に当たっては、市町村がまちづくり会社等の地域の管理運営主体との連携のもとでイニシアチブを発揮することが期待される。既に業務機能の立地も視野においた中心市街地活性化に取り組む自治体も輩出しつつあり、こうした取組をモデルとした取組の普及が望まれる。