2.ウィズコロナ・アフターコロナのもとでの中心市街地に係るニーズ

 コロナ禍のもと社会環境が変化する中で、人々の「中心市街地(まちの中心)」に対するニーズはどのように変化しているのだろうか。第2章では、中心市街地(まちの中心)における活動やまちづくりに対する意識を本調査で実施したアンケート調査の結果を中心に確認する。

2-1 中心市街地(まちの中心)の捉え方

(地域によって異なる中心市街地の捉え方)

  • 中心市街地の活性化に関する法律(中心市街地活性化法)によれば「中心市街地」とは、相当数の小売商業者が集積し、及び都市機能が相当程度集積しており、その存在している市町村の中心としての役割を果たしている市街地のことであり、「地域における社会的、経済的及び文化的活動の拠点となるにふさわしい魅力ある市街地の形成を図ること」が基本とされている。
  • ただしアンケート調査によると、具体的な中心市街地(まちの中心)のイメージは、市町村の中心ではなく、大都市圏の中心と捉えられている場合がある等、地域によって異なっていることがわかった。
    • 東京圏では、大都市圏の中心部(東京都心)が約3割、郊外部の拠点都市が約2割となっており、大都市圏の中心部が中心市街地(まちの中心)と意識されている。
    • 大阪圏、名古屋圏では、大都市圏の中心部が約2割、郊外部の拠点都市が約1.5割となっており、東京圏ほどではないが大都市圏の中心部が中心市街地(まちの中心)と意識されている。
    • 地方圏(その他の地域)では、県庁所在都市の中心部が16%、中都市中心部が11%、日常生活圏の中心部が15%であり、三大都市圏以外の拠点が多くなっている。

(年齢とともに変化する中心市街地の捉え方)

  • 年齢別にみると、年齢が高くなるほど、日常生活圏の商業拠点・公共施設等の集積地区を選択しており、生活圏が年齢とともに身近な範囲へと変化する傾向のあることが窺われる。

 

(本稿における中心市街地の扱い)

  • 上記の結果から、中心市街地(まちの中心)のあり方の検討に当たっては、地域や年齢層による中心市街地(まちの中心)の捉え方の差も考慮することが望ましいと考えられる。その一方で、中心市街地(まちの中心)における行動との関係をみると、大都市圏の中心部と捉える回答者では「仕事」「外食・レジャー・娯楽」での訪問がやや多く、日常的な生活圏の商業・公共施設等集積地区と捉える回答者では、これらの回答がやや少なかったものの、全体としての傾向は同様であった。
  • 以降では、こうした「中心市街地」の捉え方の差は区別せず、中心市街地一般として議論することとしたが、細かくみるとこうした差が存在していることに留意されたい。

2-2 コロナ禍による中心市街地(まちの中心)への訪問頻度への影響

(就業、買物の拠点として性格が強い中心市街地(まちの中心))

  • 中心市街地(まちの中心)との係わりを訪問頻度によってみると、頻度が高いのは仕事、食料品・日用品の買物である。仕事についてはほぼ毎日行くという回答が多く、中心市街地(まちの中心)は仕事をする場所としての性格が強いことが窺われる。
  • 主な機能について下記の点を指摘することができる。
    • 仕事については、中心市街地(まちの中心)を訪問する頻度が多いという回答が多いものの、この目的では訪問しないという回答も約4割を占める。これは農業従事者や工場労働者等は就業の場が基本的には中心市街地(まちの中心)以外であるためと推察される。
    • 医療・福祉サービス、金融サービスは、「1か月に1~2回行く」が約2割を占め、それ以上行くという回を含めるとおおむね3割を占める。
    • 教育・文化サービス、行政サービスは、1か月に1~2回以上行くという回答が1割程度であり、それ以上行くという回答を含めても約2割と訪問頻度が低い。

(コロナ禍で訪問頻度が減少したのは外食・レジャー、買回品の買物)

  • 一方、コロナ禍前後の訪問頻度については、生活行動全般について変わらないが約5割を占めるが、減少したという回答がそれに次いで多く、増えたという回答は少ない。
  • 目的別にみると、減少したという回答が多いのは、「外食・レジャー・娯楽」「食料品・日用品以外の買物」等であり、減少したという回答が少ないのは「仕事」「医療・福祉サービス」である。必要性が小さい活動について、行動を抑制している傾向が窺われる。

(コロナ禍終息後に訪問が増えるのは外食・レジャー・娯楽等)

  • コロナ禍が終息した場合に訪問が増える行動としては、「外食・レジャー」が21.7%と多く「食料品・日用品以外の買物」がこれに次いでおり、抑制している行動について潜在的な行動ニーズのあることが窺われる。

2-3 都心居住に対する意識

(若者の関心が高い都心居住に対する関心)

  • コロナ禍がおさまった後のライフスタイルについて、ターミナル駅周辺等の中心市街地(まちの中心)における居住生活については既に行っている、行っていないが関心がある、という回答を合わせると35%を占める。若い年代層の関心が高いが、60歳以上では既に居住しているという回答が多くなる。
  • また、職業別にみると、経営者・役員や事務職が多く、オフィスワーカーが都心居住指向を有していることが窺われる。

(二地域居住と連携した都心居住ニーズの存在)

  • 都心居住に関連して注目されるのは、都市住民の新しい住まい方として注目されている二地域居住と都心居住との関係性が強いことである。二地域居住をおこなっている回答者はほとんど都心居住を行っており、行っていない場合も、都心居住に対して関心を持っている回答者が多い。

2-4 これからの中心市街地(まちの中心)に対する機能・空間整備ニーズ

(ニーズが大きい交通ターミナル機能、憩い空間等)

  • 中心市街地(まちの中心)で充実すべき空間や機能としては、「公共交通のターミナル機能」、「公園・緑地等の憩いの空間」、「高次な医療・福祉機能、高次商業機能」、「外食機能」について、充実を望むという回答が3割を超え、やや充実を望むも含めると8割近かった。他の機能についても充実を望むという回答が約2割を占め、やや充実を望むも含めると6割以上となった。
  • 空間・機能に対するニーズは、地域別による傾向の差はみられなかった。

(年齢によって異なる空間・機能ニーズ)

  • それぞれの機能に対するニーズは年齢によって異なっており、下記の特徴があった。
    • 公共交通のターミナル機能と医療・福祉機能は、年齢が高くなるほど充実を望むという回答が多くなる。
    • オフィス等の産業機能、勤務スペース、起業支援機能は、20-30歳代の回答がやや充実を含めると7割程度と多く、60歳以上になると回答率が低下する。ホテル・会議などの交流機能、都市型の居住機能もほぼ同様の傾向を示している。
    • レジャー・娯楽機能は、30歳代で充実を望むという回答が約3割と多い。
    • 公園・緑地等の憩いの空間は、充実を望むという回答が、すべての年齢層で3割を超えており、年齢の差はあまりない。

2-5 まちづくり活動に関する意識

 中心市街地活性化にあたっては、住民等の参加意識が重要であるため、コロナ禍におけるまちづくり活動に対する意識を調査した。

 

(まちづくりに関心があるという回答は約6割、ただし積極的な参加者は一部)

  • まちづくりに関心があるという回答は約6割。このうち、積極的にまちづくりに取り組んでいる回答者は7%、関心があり催し等に参加しているという回答者が8%と15%に留まった。

(積極的活動の中心は20~30歳代、関心は高いが活動が行えていない60歳代)

  • 回答者の属性別にみると、男性の方が女性より関心が高い。また自ら積極的に関わっているのは20-30代である。また60代以上は、関心は高いものの、活動できていない。

(活動を行えていないのは参加のきっかけ不足、取組の認知不足など)

  • まちづくり活動を行えてない理由についてサンプル調査で確認したところ、参加のきっかけ不足、取組の認知不足、そして多忙によるものという回答が多い。
  • ただし、課題が解決した場合の参加意向については、「機会があれば参加したい」との回答が6割以上と多く、潜在的な参加ポテンシャルは高いと推察される。

(コロナ禍を機に高まったまちづくりへの関心)

  • また、コロナ禍の前後におけるまちづくりの関心について、関心が高まったとの回答が約3割を占めていることが注目される。

(コロナ禍が落ち着いたら活動してみたい取組)

  • コロナ禍が落ち着いたら参加してみたいまちづくり活動としては、「まちバル(チケット制の飲み歩き・食べ歩きイベント)」「まち歩き(街の魅力や課題を知るツアー)」「伝統的なお祭り」「まちなかマルシェ」等が多かった。
  • コロナ禍で抑制されていた外出機会が求められている。きっかけ作りとしては、まち歩き等、気軽に参加できる取組が有効だと考えられる。

2-6 中心市街地活性化の必要性と課題

 以上の調査結果から、中心市街地(まちの中心)は、コロナ禍のもとで来訪者が減少したが、潜在的な来訪ニーズは高いことが明らかになった。中心市街地(まちの中心)は交通の利便性が高く、集積のメリットを活かした機能集積が存在しており、こうした集積のメリットに対するニーズを反映したものだと考えられる。

 特に、就業、食料品・日用品の買物等の生活に必須な分野においては、中心市街地(まちの中心)は活動の拠点となっており、高い頻度で訪れる人が多い。外食、付き合い等の必ずしも生活に必須ではない活動については、依然として活動抑制傾向が強いが、コロナ禍終息後は訪問頻度がある程度までは回復するものと推察される。

 今後の中心市街地(まちの中心)に対する機能、空間ニーズとしては交通のターミナル機能、憩いの場、商業機能等が大きいが、年齢層によって差が大きいことにも留意する必要がある。コロナ禍を機に在宅勤務者等が増えたことも踏まえて、多様な機能ニーズに応えられるようにすることが重要だと考えられる。

 中心市街地(まちの中心)の活性化に当たっては、まちづくりへの参画者を増やすことも重要である。現状は6割が関心を有しているが実際に活動・参加している人は15%にとどまっている。また、多くの中心市街地(まちの中心)では、コロナ対策のため、イベント開催等を自粛している状況である。ただしコロナ禍後にまちづくりに対する関心が高まったという回答者が3割程度おり、参画を推進することが望まれる。